「なっ、ない!」 PARTⅡ

Foovoowoo Japan 日本語Foovoowoo Japan 中文Foovoowoo Japan EnglishFoovoowoo Japan FrancaiseFoovoowoo Japan Espanola

今から7・8年前だったろうか。学生時代に何度か行った事のあるクラブに、会社の同僚達を連れて行った事がある。
その前に近くで飲んでいた事もあり、 懐かしさ半分で久しぶりに店を覗いてみたくなったのだ。

店内に入るとかなり混んでおり、70・80年代に流行った、懐かしのソウルやらディスコ・ヒッツやらでみな盛り上がっていた。 この辺りの選曲が個人的に好きだったというのが、当時、この店に通っていた理由だった。

連れて来た同僚達と壁際のソファ席に座り、しばらく店内の人間模様を眺めながら、酒を飲んでいた。

そのうち、フロアの中央で4・5人の仲間達と踊っている、 ロン髪の20代後半と思しき青年が目に付いた。
その青年の風貌は至って普通。他の男女を含んだ仲間達も、 特に目立つ様相ではなかったが、 その連中の周りに若干スペースが空いていた事もあり、フロアに目を向けると、なんとなく彼らが目線に入ってくるのだった。

やがて、その仲間達は曲に合わせて踊りながら、中央の青年を四方から囲い込むように徐々に摺り寄って、その輪を小さくしていった。
皆で青年の姿を隠すように寄り添い合うので、そのうち青年の姿がほとんど見えなくなった。

私は後輩の男につぶやいた。

「なんか、楽しそうだよな、ヤツら。」

「そうっすねぇ、盛り上がってますねぇ。」

と、次の瞬間、その4・5人が一斉に散らばり、再度、青年の姿が現れると、何故か青年の上半身は裸になっていた。
仲間達が周りで「フォ~~~ゥ!」とはやし立てる中、青年は高く上げた両手を左右に揺らしながら、ノリノリで踊っている。

間もなくして、今度は、青年の後ろに回っていた仲間の女性が、皆にショーでも見せるかのような目線と手つきで、 彼のズボンを徐々に引き摺り下ろし始めるではないか。
青年は腰を左右にクネクネ振りながら、変わらず高く上げた両手を揺らせて音楽に身を委ねている。

「何やってんだ、あいつら?」

「この後、まさか、じゃないですよねぇ。」

、、、が、そのまさかだった。。。

先程の女性は、私達から4m程の位置でこちら側を向いて踊っている、青年のトランクスに手を掛けると、 ズボンの時より勢いよく膝下まで一気に摺り下ろした。

「おっ、オイ、マジかよっ!!!」

当然、見たくもないヒトサマのナニの出現を想定し、私は反射的に目を反らした。
ところが、次に後輩の放った言葉は意外なものだった。

「ないっす、ないっすよ、先輩っ!ナニがないっす!!」

思わず身を乗り出す様に、二人して青年の股間を直視してみると、なんと、その股間には、縮れたモジャモジャくん以外には、 突起物も、二つの球体も、全く見当たらないではないか。

照明の関係か、はたまた腿の間にでも挟んでいるのか?
いやいや、何度見ても、「それら」 は付いてなかったのだ。

と、そこで二人して我に返った。
あるはずのモノがナイというあまりの衝撃に、かなりの前傾姿勢で身を乗り出していた自分達の上体を、 後方のソファに揺り戻した。

青年の仲間達は、私達の反応が期待通りだったのか、キャラキャラと笑っているように見えた。

「あ、あの、フツーの風貌で、ナイってのは反則っすよねぇ。」

「ほぼ合成写真的な違和感だったな。。。」

その頃、同僚の女性達は、連中とは離れた奥の方で踊っていた。もし彼女達にあの衝撃的な股間ショーを見られてしまったら、 こんな店に連れて来た自分の神経が疑われかねない。
そう思った私は、そそくさと彼女達を連れて店を出たのだった。

ちなみに、新宿二丁目にあるその店の名は「ニューサザエ」。
ゲイの間では有名なクラブであった。

ある意味、私の自業自得と、言えなくもない事件ではあった。

(終わり)

       
マッサージ
交差点
コンセント
福笑い
「なっ、ない!」
リーマン・ブラザーズ
半年前の記憶

Copyright (c) 2010 Foovoowoo Japan