管理人の独創小説 『首長族の宴』

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(8)プーケットの夜

部屋に戻ってシャワーを浴びた後、二人はプーケット中心街の地図を広げて今夜の作戦を練った。
前日は、ディスコもどきのライブハウスに連れて行かれる羽目になった為、今夜こそはマトモな店に行きたかった。だが、地図に載っているのはレストランやバーばかりで、ディスコのような店の情報はなかった。

「仕方ない。とりあえず街に行って歩きながら探すか。」

「そうだね。行き当たりばったりで。」

例によってヨットクラブまで歩き、そこからタクシーで中心街に向かった。

到着後、まずは腹ごしらえという事で、近辺を散歩がてら歩き回った。 途中、ネオンの外灯に彩られた屋台の集合体のような広場が目に付き、敷地内を覗いてみた。奥の方に見える特設会場のような所に、人が群がっている。

近付きながら浩之が言った。

「ムエタイだ!ムエタイ・バーだよ、ここ。」

リング上を見ると、高校生くらいと思しき若者同士が、必死の形相で殴り合っていた。

間近で見ると、かなりの迫力だ。

「ビチーンッ!」

「バツーンッ!」

お互いのパンチや蹴りが当たる度に、激しく鋭い音が離れた所まで響いてくる。 結局、二人は食事をするのも忘れ、ビール片手にしばし試合観戦に没頭してしまった。

「やっぱ近くで見ると迫力あるよな。あんなガキなのに大人顔負けだぜ。」

浩之が言った。

「さすが国技っていうだけあるね。あんなヒザ蹴り喰らったら一発で終わるね。」

そんな会話を続けながら意外に長居してしまい、気付くと8時を回っていた。まだお目当てのディスコも探していなかった事もあり、食事は後回しにする事にした。

歓楽街と思しきエリアを徘徊しながら、店の外観や、中から聞こえてくる音楽を頼りに、イイ感じの店を探しまわった。だが、二人に取ってイイ感じの曲がかかっているのは決まって、いわゆる「ゴー・ゴー・バー」であり、 店の女の子が裸で踊ってはいるものの、残念ながら<客が踊る店>ではなかった。

散々歩いた後、ディスコは諦め、途中で見つけたそれなりにイイ曲がかかっていたゴーゴーバーのひとつに入る事にした。ピンクと黄色の派手なネオンで浮かび上がった店名の「GALAXY」という文字を見て、浩之は苦笑いした。

「いかにもディスコって感じの名前じゃねぇかよ。紛らわしいなぁ。」

注文したシンハー・ビールを運んできた、お色気たっぷりの女性スタッフを横目に、浩之が吐き捨てるように言った。

一方、清彦にとっては正直、ゴーゴーバーでも良かった。 兄弟とはいえ、男二人ではなんとも華が無いではないか。
目の前には、腰をくねらせながポールダンスに興じる艶やかなダンサーたち。。。
どこからともなく店の美しいタイ人女性が近づいてきて、清彦の肩に手を回しながら、あれやこれや優しく話しかけてくる。

<まんざらでもないけどなぁ。>

険しい表情を崩さない兄を横目に、清彦はひとり呟いた。

結局、小一時間ほどして、さすがに空腹感に襲われた二人はその店を後にし、近くにあった飾り気のないオープンエアーのレストランで遅い夕食を取った。タイの代表的ウィスキー「メコン」をボトルでオーダーし、まずい、まずい、 とぼやきながら、チビチビ呷った。

そんなこんなでプーケットの最後の夜は、またもや「不完全燃焼」に終わり、中途半端なほろ酔い気分で幕を閉じた。 そしてまたもや、ジャングルビーチまで戻るタクシーの交渉に最後の労力を費やすのであった。

部屋に戻った二人は、次の日からの「秘境巡り」に備え、いつになく早めに眠りに就いた。

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