東京から越後湯沢を経由して、富山・高岡まで4時間。そこから小牧ダムまで70分ほどバスに揺られた後、更に遊覧船に乗って30分。
ダムで堰き止められた湖水のほとり、断崖に張付くように建つ大牧温泉は、船でしか辿り着けない秘境の一軒宿です。
今から800年ほど前、源氏に敗れた平家の武士の一派がこの辺りまで逃れ、湖畔から湧き出る温泉を発見して傷を癒したという落人伝説が 残る名湯の宿でもあります。
岐阜の北部から富山の西側を流れる庄川が富山湾へと至る途中、ダムで堰き止められた小牧の辺りから、 大牧温泉への<船旅>は始まります。
山々に囲まれた、淡い緑色の穏やかな水面を庄川遊覧船が滑るように進んで行きます。かつてはこの湖底にも村落があったそうです。
1930年の小牧ダムの完成により村落は水の底に沈み、ダム湖の水面と背後の断崖との間に取り残された一軒の温泉宿。
それを何とか存続させようと、源泉を湖底から採り込んで復興したのが、現在の大牧温泉の基となっているそうです。
風光明媚な山峡の中を進むこと30分。
大牧温泉に到着です。船着き場から宿までの斜面を登って行きます。
途中の立て看板の内容からも、周囲から隔絶されたこの地には手付かずの自然が残っている事がうかがえます。
斜面を登りきると、大牧温泉の建物が見えてきました。
わずかなに残る平坦な土地の両側は、谷側も山側もかなりの急斜面です。
部屋は広縁付きの和室。
ちなみに右側に脚だけ見える人物は、同行した管理人の父親であります。あしからず。。。
窓の外には、先程遊覧船で進んできた湖面が広がってます。
湖面に張り出すように建つ宿の部屋は、まるでクルーズ客船の船室にでもいるような、とても不思議な感覚です。
また向かいの山肌には鳶の巣があり、あのなんとも言えない情緒のある鳴き声が山間部に響き渡ります。
窓を開けて、試しに菓子の屑を中空に高く放り投げてみると、鳶が素早く滑空してきて、それを見事にキャッチ!ビックリです。こちらは宿泊棟裏手の急斜面を登った処にある露天風呂。こじんまりとした佇まいです
源泉温度58度という弱アルカリ性の湯は、硫化水素の臭いが僅かに感じられます。
泉質は、ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩泉との事。
原生林に囲まれた湯船からは湖面が垣間見える程度ですが、更に斜面の上方に位置する女風呂からは山峡の絶景が望めるようです。
大牧温泉の魅力、それはなんといっても、周囲から隔絶されたような特異な環境が醸し出す秘境ムードにあります。
寄港地に停泊している客船の船室のような水面との距離感も、忘れられない強い印象を与える事でしょう。
不便な立地という非日常性が、隠れ家的な心地良さをもたらしてくれます。
大牧温泉は、ある意味、海外のハイダウェイ型の高級リゾートにも匹敵するような素晴らしい魅力を持った温泉宿といえるのではないでしょうか。
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