東京から特急「踊り子」で2時間少々、伊豆半島南東部、河津駅で下車してバスに揺られること約30分。
山間の険しい高低差を結ぶ名物立体橋「河津七滝(かわづななだる)ループ橋」の麓に位置するのが、この「温泉天国」・天城荘。
外界から隔絶されたような急峻な渓谷の川沿いに露天風呂が点在し、落差約30mの名瀑 「大滝(おおだる)」を目の前にして湯船に浸かれる、類まれなる”滝が見える温泉"なのです。
近年では映画「テルマエ・ロマエ」の撮影に使われたロケ地のひとつとしても知られ、今では世界中から観光客が訪れ、特に風水にこだわる中国の方々には、滝を望みながらの入浴=”運気が上がる”ということで、密かに人気急上昇中なのだとか。
早咲きの河津桜で知られる河津からバスで約30分。
「天城越え」のルートを修善寺方面に向かって遡り、平地から徐々に深い山間に入っていく辺り、河津川の渓谷沿いに位置する天城荘。
創業50年以上に及ぶ歴史の中で、昔は国民宿舎だった時代もあったためか、とても親しみやすい雰囲気が漂う温泉宿です。
館内に入ってすぐさま目に入るのが、ケロリンの風呂桶を持った阿部ちゃん。。。
冒頭にもありましたが、映画「テルマエ・ロマエ」の撮影に使われたこともあって、宿の知名度アップにもかなり貢献したことでしょう。
ちなみに天城荘の露天風呂は日帰り入浴も可能。
水着着用の男女混浴で気軽に入浴できて、若いグループ客や外国人客等にも大人気。営業時間も20時までと旅館の日帰り入浴では珍しく"ナイター営業"もやってます。
渓谷の急斜面に建っている為、通りに面したロビー階が既に3階に位置していて、ラウンジからの見晴らしもバツグン。
眼下に広がる渓谷とその向こうの山並みが一望できます。
で、いきなり場面は変わって客室内。今回選んだのは、露天風呂付客室の「辰砂(しんしゃ)」というお部屋。
「THE 和室」といったシンプルな感じではありますが、10畳+広縁+テラスという、かなりゆったりとした間取りです。
私自身、天城荘には日帰り入浴では何度も訪れていますが、宿泊となると、20年以上も前に一度来て以来、今回が2度目です。
久しぶりにホームページを見たら、当時はなかった露天風呂付客室ができたのに興味を持ち、今回の滞在に至りました。
そもそも高級旅館というわけでもないので、露天風呂付客室にしては意外にリーズナブルなのが嬉しいところです。
主室の先にはゆったりとした広縁。
というか、ほぼ部屋といってもいいかも知れません。
で、奥に見える冷蔵庫の中には、小瓶のビールにワイン、冷酒やウーロン茶・ミネラルウォーターが入っておりまして、これら全て無料でした。
事前に知らされていなかったので、ちょっと嬉しいサプライス。
更に、その広縁の外には、これまた広々としたプライベートテラス。
高級感こそないものの、日本家屋らしい木の温もりを感じさせる、素朴さが妙に心地いいんです、これが。
目の前には深く切り込むダイナミックな渓谷と、その対岸から立ち上がる急峻な山肌とを一望できる、絶景のプライベート空間。
目の前の緑と、遠目に望む山の稜線とが、その遠近感を際立たせます。
これがまた、何とも言えない解放感。
軒の開口部の先に広がる青空。
聞こえてくるのは、蝉の鳴き声と小鳥のさえずり、そして遥か下方を流れる清流のせせらぎ。
そしてテラスの左手には河津七滝ループ橋が。
直径80m、高低差40m超を結ぶこのループ橋は、1978年の地震による山腹の道路寸断を教訓に、土砂崩れなどの災害に強い高架橋として1981年に誕生しました。
一方、テラスの右手には、谷側に張り出だした露天風呂。
開口部は全て窓付きなので、正確には「半露天風呂」というべきかも知れませんが、その情緒感と解放感からして、個人的にはもはや露天風呂と言っていいのではないかと思います。
見ようによっては、山の斜面を上っていくケーブルカーのようにも見えなくもない絵ズラ。
木小屋風のこじんまり空間に自然石の床が敷かれ、赤い陶器の円形風呂が窓際に収まっています。
眺望だけを考えると、いっそ窓がなければと思いますし、実際、そうできるはずの造りですが、夏の蚊除けや冬場の寒さ対策などを考慮して、敢えて窓を付けたのではないかと思います。
もちろん、この湯船からもループ橋が見えます。
このお風呂は、個人的にほんと気に入りました。
結果、1泊の滞在で6回も入浴してしまったくらいです。
陶器のくすんだ感じの赤色が何ともシブい!
二人でも充分入れる大きさですが、一人で入れば、湯船の縁に沿って両腕を羽のように伸ばせるので、これがとっても快適でこの上なくリラックスできます。
色が色だけに大きな盃のようにも見える吐湯口からは、泉のように絶え間なく、源泉掛け流しの湯が注がれ続けます。
反対から見るとこんな感じ。
洗い場部分はタイル張りでやや近代的な造り。
それにしても、縁いっぱいまでお湯の張った湯船というのは、いいもんですねぇ。
心まで満たされていくようで。
こちらは露天風呂に隣接した洗面所。
アメニティグッズの中にはマウスウォッシュなどもあって、なかなか気が利いているなと。
露天風呂の浴槽に合わせた同じ陶器製のシンクがイイ感じ。
「あっ!コンタクトレンズ、排水溝に流しちゃった!!」
なんて事が無いようにと、流出防止用マットが用意されていたりして、さり気ない気配りに感心。
Pen (ペン) 「特集:ひとり、籠(こも)る宿。」〈2020年3/1号〉 [雑誌]
じゃらんムックシリーズ クチコミ90点以上! 泊まって良かった宿 2020-2021 関東・東北版 (じゃらんムックシリーズ じゃらん特別号)
じゃらんムックシリーズ クチコミ90点以上! 泊まって良かった宿 2020-2021 西日本版 (じゃらんムックシリーズ じゃらん特別号)
CREA 2020年2・3月合併号 (だから、ひとり温泉。)
Discover Japan 2020年2月号「世界に愛される ニッポンのホテル&名旅館」 [雑誌]