「印傳屋」の印伝小物を管理人が初めて目にしたのは、浅草のとあるセレクトショップ。
キメ細かい鹿革に映える、光沢ある漆塗りの連続模様の美しさに魅せられて以来、他にどんな製品があるのか、公式ホームページ で隈なく物色。数ある商品の中から、手頃な価格と機能性とで選んだのが写真の薄型コンパクト財布。
印傳屋のカタログ上では品番「No.1208」、品名は「小銭入G」と謳われていますが、諸々のショッピングサイト上では「四方開き小銭入れ」、または「四方開き薄型財布」と称されることが多いようです。
機能としては
「中の小銭が見やすい四方開きの小銭入れ」
+
「数枚のカードやお札が入る簡易ポケット×2」
といった程度で、財布として必要最低限のシンプルな造りと、スマートな外観が特徴です。
<こんな方々にオススメ>
バウハウスのミース・ファン・デル・ローエではないですが、「Less is more.」という言葉がピッタリのこのお財布、勝手な推測ではありますが、↓ こんな方々 ↓ にはきっと気に入っていただけるんじゃないかと思います。
① 日々、小銭の出し入れがほとんどではあるが、単なる小銭入れではなく、お札とカードが数枚入る最低限の財布機能と、そこそこの高級感が欲しい、という方。
③ 近所の買い物や外食など、当面必要なお金だけを持ち歩く「セカンド利用」の財布が欲しい、という方。
④ スリムフィットのジーンズを好み、しかも財布の定位置は後ろポケットと決めているが、椅子に座った際、ぶ厚い財布でお尻側が突っ張る感じがたまらなくイヤ!という方。
とまぁ、要するに、機能的には「小銭入れ+α」程度で良いけれど、体裁的には、財布としての威厳というか、それなりのカッコ良さとオリジナリティーが欲しい。
そんな方々には打ってつけの、無駄を省いた機能美と粋な伝統美が融合した、スマートでコンパクトな財布って感じでしょうか。
一方、免許証や保険証、滅多に使わない複数のクレジットカードや、いつ再訪するかわからないお店のポイントカードなど、「何はともあれ、全て財布に入れておかないと不安。」な方や、「中身がパンパンに膨らんでこそ財布!」といった方々には、間違ってもオススメできない代物ではあります。
<色柄について>
さて、ここでいったん、商品そのものの説明に戻りまして、写真の柄は「爪唐草」、色は「黒革×白漆」となっています。
「爪唐草」は印傳屋で代々受け継がれてきた代表的な柄のひとつで、「身を守る」という意のある"爪"に、「長寿」や「永遠」等の意を含む "唐草"を組み合わせた、吉祥文様でもあります。
写真では実物の風合いが伝わりにくいのですが、敢えて文章で表現するならば、色付けされた鹿革の部分は「ツヤ消し」と言いますか、光を吸い込んで奥に引っ込むような感じなのに対し、漆塗りの部分には光沢があり、また実際に漆面も盛り上がっている為、柄全体が前面に浮かび上がってくるような感じです。
この両者のコントラストこそが、印伝ならではの色柄の立体感を生み出しているのでしょう。
ちなみに印傳屋さんの小物類は、色柄の種類が非常に豊富なのも特徴で、この小銭入れにしても、男性向き・女性向きと合わせて実に50種類以上もの バリエーション が存在します。
<白漆の色について>
また漆の色に関してですが、「白漆」とはいうものの、実際にはカフェオレ色というかベージュ色に近く、その色につられての視覚効果なのか、ベースである「黒革」の方も、光の加減によってかなり茶色掛かって見えたりします。
漆といえば吸物椀くらいしか思い浮かばない私にはピンと来ないのですが、漆塗りは時が経つほどに透明度が増し、その色合いも鮮やかに変化するらしいです。中でも特に変化が著しいのが白漆で、ベージュ色からゆっくりと経年変化していき、完全な白にはならないものの、徐々に美しい白色が際立ってくるそうです。
ところで、そもそもなぜ「白漆」なのに「茶色」いのか?
当初私は、敢えて茶色っぽく色付けしているのかと思っていたのですが、実はそうではないようです。
漆で黒以外の色を出す時には、「透き漆(すきうるし)」という精製した漆に顔料を混ぜるらしいのですが、その透き漆というのがメープルシロップのように半透明のアメ色で、いくら白い顔料を混ぜても漆の色が勝ってしまう為、いわゆる純白には決してならないのだとか。
ということで、「白漆」は生粋の白ではないものの、もともと茶色く生まれた漆が、必死に白に近づこうと奮闘してできた、”健気な色”なんですね。
<サイズについて>
次に大きさに関してですが、<縦9.7㎝ × 横10.5㎝>とほぼ正方形。
タバコの箱と比べるとこんな感じで、二つ折りの札入れ財布などでは一般的なサイズかと思います。
<厚さについて>
厚さに関しては公称1.5㎝となっていますが、実測した限り、小銭入れの蓋あたりの最も厚い部分(写真中央より左寄りの段差部分)で1.7㎝、カードポケットの開口部(写真右端の膨らみ部分)で0.8㎝程度でした。
<二つ折り財布との比較>
ほほ同じサイズの二つ折り牛革財布(小銭入れ付)と厚さを比べてみました(いずれも中身はカラの状態)。
最も厚い部分に関しては両者の差はほとんど無いのですが、財布の両端部までほぼ厚さが一定の二つ折り財布に対して、この印傳屋の小銭入れは、両端に行くに従って徐々に薄くなっているのがわかるかと思います。
この「両端が薄い」というのが、実はこの財布の大きな利点のひとつで、何よりジーンズの後ろポケットに入れる際などにその差は歴然。
財布の両端をグイグイとポケットにねじ込むように入れなくても、この薄型財布ならス~ッと滑らかに入っていきます。
ちなみに重さに関してですが、先の二つ折り牛革財布の75gに対して、印傳屋の薄型コンパクト財布は45gほど。10㎝×10㎝サイズの革財布という括りで捉えると、45gというのはかなり軽い部類に入るかと思います。
繊維が非常に細かく、柔軟で軽量、通気性に優れた鹿革の特徴が活かされています。また鹿革はそれ自体に油分を多く含むことから、放置状態でも経年劣化しにくく、牛革に比べてお手入れが楽というのも、あまり知られていない特徴のひとつかも知れません。
<小銭入れの内側>
小銭入れの蓋を開けるとご覧の通り、四方に大きく口が開きます。開口部の内側はナイロン布張りで、「INDEN-YA」のロゴが織り込まれた連続模様。
なお側面部の外側(くの字型に折り込まれた両側の部分)には牛革が用いられています。
気持ち良いくらいにバックリ開いた小銭入れ部の内寸は、ざっくり計って、<縦:約7.5㎝ × 横:約9㎝>とかなり大きめ。
底面が大きい分、小銭同士がさほど重なり合わないので、わざと小銭を貯め込みでもしない限り、全体の厚さにも大して影響はしないでしょう。
<平らな裏側>
一方、裏側はこのようにほぼ平面で、手前にスリット型のポケットがあります。このポケットはやや革地が突っ張った感じで、あまり頻繁な出し入れには向かないように思います。
Suicaなど、タッチだけで済むカード類や、使用頻度が低いものを入れておくのが無難でしょう。ちなみに背面部の黒い無柄の部分は牛革製です。
<スリット型ポケット>
一応、複数枚のカードが入りますが、印傳屋直営店の店員さん曰く、あまり多く入れると革が伸びてしまい、やがて「そのうちの一枚でも取り出すとスカスカ」な状態になってしまう、とのことでした。
個人的には2枚が限度ではないかと思います。
ちなみに私は、このポケットにはSuica定期券1枚のみにしています。
<オープンポケット>
一方、先ほどのポケットとは別にもうひとつ、両サイドを押すと開くオープンポケットが付いています。こちらはそこそこ出し入れがしやすいので、二つ折りのお札などを入れておくのに最適です。
<ポケットに入れるもの>
こんな感じで、千円札数枚と、いざという時用に1万円札の1枚でも入れておけば、ちょっとした近所での買い物用等としては事足りるでしょう。
お札とカード類を一緒に入れる事に抵抗さえなければ、少々きつくはなりますが、このポケットにカード3枚は入ります。
私の例で言えば、先にご紹介した手前側のスリット型ポケットにはSuica定期券のみ、こちらのオープンポケットには数枚のお札の他に、銀行キャッシュカード、クレジットカードと運転免許証、更にはレシートまで入れてます。
<印傳屋商品の価格について>
ここまで価格に付いて触れずにきてしまいましたが、この薄型コンパクト財布、お値段はズバリ、税込¥7,480 ナリ(2020/6月現在)。
賛否両論あるでしょうが、私個人的には、 実際に買って使ってみて非常に満足度も高く、 かなり良心的で割安な価格ではないかと思います。
他の商品に関しても、印伝の主要なレギュラー商品に関しては、全般的にお値段が手頃で、その質感の高さを踏まえると、「意外に安い!」と感じる商品も少なくないと思いますよ。