驚きの実話 「半年前の記憶」(2)

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あまり間を置くのも怪しまれると思い、机上にあったPCを持って素直にそのまま1階に降り、刑事の前で電源を入れた。
スペックの低いシンクパッドが稼働するまでの短くない数分の間、刑事達と差し障りない会話を交わして間を持たせた。

「えーと、5月の後半ですよねぇ。」

エクセルのタブを遡りながら、前年2002年の5月のところをクリックした。

「あぁ、確かに行ってます。5月25・26の週末、車で下田に行きました。」

私の言葉と同時に<静岡県警>のペンを持つ手が動き出した。

「そうですか、下田ですか。何をしに行ったんですか?」

「海に入りに行ったんです。」

「えーと、サーフィンか何か?」

「いえ、只の海水浴です。」

「5月の海で?」

「はい。。。」

「じゃ、ウェットスーツか何かを着て?」

「いえ、普通の水着だけです。」

「海水浴になんないでしょう?水が冷た過ぎて。」

<警視庁>の方が、そんなバカな、という感じで言った。

仮に第三者がこのやり取りを聞いていたら、何やら真っ先に私が容疑者として浮上しかねないような展開ではないか。

「ええ、、、冷たいには冷たいんですけど、その頃の下田の海って水がほんと綺麗で、大好きなんですよ。 最初だけ我慢すれば意外に慣れるし、なんか身が引き締まるような感覚が結構いいんですよね。」

「ほんとに?」

実際のところ、その数年前になるが、夏が来る前の人気の少ない下田の、海のあまりの綺麗さに感動し、 水着がないのに思い切って海に入ってしまった事があった。
覚悟していた水の冷たさにやがて慣れた後の、 何とも言えない爽快感。誰も泳いでいない海を独占したような心地よさ。その味をしめて以来、5・6月の下田には何度か訪れて海水浴をしていたのだった。

が、普通に考えて、普通ではない。

刑事達が首をかしげるのも当然の事ではあった。

ありのままを実直に伝えたつもりだったのだが、いざ言葉に出してみると、 自分でも何やら苦し紛れの言い訳と捉えられかねない内容である事に思い至り、赤面しそうになった。いや、実際に赤面していたのかも知れない。。。

「ちなみに、水の冷たさはさておき、その25・26日というのは、下田の天気は雨だったはずなんですよねぇ。」

「えっ!そ、そんなはずはっ。。。」

<、、、ない。>

と断言したいところだったが、自分が海に入ったという事実から、であれば天気だったに違いないという逆算的な根拠しかない。言葉を飲み込んで、当日、海に入るまでの経緯や情景を今一度、呼び起こしてみた。頭の中にいくつかの映像が蘇った。

朝起きて部屋の窓を開けて見上げた空、、、

冷たく澄んだ海水と水面に反射する日差し、、、

遠めに見えた訓練中と思しきライフセイバーの一団、、、

「そうだっ!そうです。確かその日(26日)の朝方は雨で、起きた段階では海水浴は諦めようと思ってたんですよ!でも朝食を済ませて少ししたら、徐々に日が照ってきて、海に出るだけ出でみようって事になったんです!!」

取調室で必死になって自分の無実を主張する容疑者。。。 そんな刑事ドラマでよくあるシーンが、今、まさに自分の状況にピッタリではないか。

<警視庁>が横を見やると、その目線の先にいた<静岡県警>が手元の資料と思しき書面に目線を落とした。複数のページを何度か行き来した後、彼は、私と<警視庁>と、交互に目線を向けながら言った。

「確かに、当日の下田は全般的に雨でしたが、局所的に晴れ間が見られた地域もあったようですね。」

<だろっ!そうなんだって!!晴れてたんだって!!!>

私は心の中で叫んだ。

ちょっとした安堵感も束の間、話題は次に移っていった。当時宿泊した宿、一緒に行った相手の情報など、関連情報を一通り聞かれた後、更に面倒くさい質問が続いた。

「25日の夜18時頃、車で蒲田から環八を通って、高速に乗ってますよね。その後26日の帰宅に至るまでのルートと、寄った場所と時間帯を順に教えてもらえますか。」

<オービスだか何だかで調べたんだろうけど、蒲田?環八?そもそもなんでオレ蒲田に寄ったんだ?>

伊豆に行くのに通常は使わないそんなルートを通った事自体自分でも記憶にないのに、それを警察に知られているという事実に、内心かなり動揺した。

(次のページに続く)


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