前ページでご紹介したように、2CVは20年以上も前に生産を終了した車という事もあって、機能的な面では到底、現代車に及びません。
エアコンはなく、冬はエンジンから放出された熱をダクトを通して室内に流すと言う原始的なもので、夏は窓を開けるしかありません。
速度が100㎞を越えようものなら、高鳴るエンジン音や車体が風を切る音で、かけている音楽が聞こえなくなるほど。
薄い鋼板で覆われた車体は、衝突安全ボディーというには程遠く、横から衝突でもされようものなら、ひとたまりもないでしょう。
このページでは、そんな車を私はなぜ購入したのか、その経緯についてまとめてみました。かなり個人的な内容ではありますが、ご了承下さいませ。。。
私が2CVを購入するきっかけとなったのは、かれこれ15年以上前、1997年の夏の事でした。当時、勤めていた会社を退職し、しばらくは仕事をせずにのんびりしようと決め込んでいた私は、時間ができた事もあり、なんとなく車で遠出をしてみたい気分に駆られました。
とはいっても、もともと車に全く興味のなかった私は、実はその頃まで一度も車を所有した事がありませんでした。また私の父に至っては免許すら持っていなかった為、家には一台も車が無いという、珍しい家庭だったのです。
が、これを機会に自分の車を購入しようという気持ちが高まり、まずは「カー・センサー」という、当時は車探しの定番だった雑誌を買って、手の届きそうな値段の中古車を探し始めました。
そもそも車に興味がない、イコール、買いたい車も特に思い浮かばないまま、闇雲にページをめくって中古車を物色しました。
只ひとつ、あまのじゃくな性格の私は、あまり人が乗らないような珍しい車、という大雑把な条件だけははっきりしていました。
結果、性能はよくてもデザインが無難過ぎて面白みに欠ける現代車、特に日本車の中では、これといった好みの車が見当たらず、最終的な候補に残ったのは、フォルクス・ワーゲンのタイプ1(=通称ビートル)、同じワーゲンのカルマンギア、そしてシトロエン2CVの3台で、 いずれも1900年代半ばに生まれた、丸みを帯びた車体のレトロカーに行き着いてしまいました。
色々と考え抜いた挙句、カルマンギアは価格が比較的高価という事もあって諦め、ビートルと2CVとでしばらく迷っていました。只、ビートルは当時、何度も走っている姿を見た事があったのに対し、2CVに関してはそれまで意識していなかったせいか、ほとんど見た記憶がありませんでした。
一度、実物を間近で見てみたいという衝動にかられた私は、僅かな掲載件数の中から見つけた、ある横浜の中古車ディーラーに、直接2CVを見に行ったのです。間もなく遠くの方に、周りの車高の低い車の間から、猫背の丸い車体をひょっこりと現した、2CVの姿が目に入りました。
高鳴る期待を抑えて小走りに近付き、まじまじとその実物を眺めました。
< こ、これだっ。これ欲しいっ!>
あっけないくらいに、ほんの数秒で意を決した自分がいました。
まさに一目惚れというやつです。
それから数週間後、故障した時の事なども考え、結局、もっと近い都内のディーラーの販売車を探した末に、2CVの最終生産年である1990年式の チャールストンを、人生初めての愛車として手に入れたのでした。
以来この10数年間、様々な出来事がありましたが、私は不思議とこの車に飽きる事がなく、今も変わらず乗り続けています。
ちなみに気になる購入価格ですが、1997年購入時の走行距離は36,000㎞で、ワンオーナーのディーラー車、キャンバストップとタイヤは新品に交換という条件で、車両価格88万円でした。
カーセンサーなど主要情報誌で一通り見ても、下は30万円台から上は160万台くらいまで、まさにピンキリ状態で、高いのか安いのかわからないまま、信用できそうなディーラーだったから買った、というのが正直なところです。
私見ではありますが、オーバーホールも含め、とことん本格的なレストアを施した「美しい」2CVに関しては、150万円以上というのも、妥当な価格かと思います。
逆に30~50万円くらいで手に入るものに関しては、「ベース」価格とでも言いますか、購入後も何かと自分で手を入れなければならない、ある種の覚悟が必要な価格帯ではないかと思います。
【 タイヤ について 】
購入後にかかる費用で意外にイタいのがタイヤです。
「ミシュランX 125-15」という、まるでバイク用のように幅の狭いタイヤなのですが、ちょっと車に乗らなくなると、荷重による側面のひび割れが起こりやすく、
経年劣化しやすいゴム質のようで、意外に交換頻度も高いような気がします。
問題なのは、2008年くらいを境に、このタイヤの日本での流通が非常に不安定になってしまったこと。
私が2CVを購入した当時(1997年)では1本:¥11,000前後と値段もそこそこで、在庫に関しても特に心配なかったのですが、後に生産終了との噂が囁かれた時など、どこに聞いても在庫が無い、またはあったとしても1本:4万円前後などという、とんでもない暴騰時期もありました。
結局、生産終了ということではなく、あくまでも流通上の問題ということだったようですが、価格的にはもはや2万円以上が相場として定着した感があります。
普通の車なら、幌の張替えともなれば、ディーラーに一任することになるでしょうが、2CVの場合、何しろ造りがシンプルなので、そこそこの工具とやる気さえあれば、 幌の一式セット(5~6万円前後)を購入して自分で張替えることも可能です。
ちなみに、2CVの幌の色はディフォルトではブラックで、現に私の2CVもそうでしたが、2回目の幌交換の際には、思い切って他の色に変えることにしました。
私の場合、日頃から消耗部品の購入などでお世話になっている「モンテカルロ」さんに幌セットを発注。
シトロエン純正ではないにせよ、幌の色はけっこう豊富で、黒・グレー・白・グリーン・赤・白・ベージュなど、10種類以上あるようです。
通販で実物を見れないだけに、色選択にはとても迷ったのですが、メールで色々と相談し、結局、私が選んだのは、「ダークベージュ」。
カフェオレ色と言いますか、結果的にこれが私のイメージ通りの色で、たいへん気に入りました。
なお施工の際には、購入後に送ってもらった幌交換マニュアルを見ながら、2時間近くかかったような記憶がありますが、何とか無事一人で張替えることができました。
ちなみに、後に他の方々の体験談などを読んでみると、30分~1時間程度で完了したという方が大半でしたので、事前に情報収集さえしておけば、難なく作業を終えることができるでしょう。
ちなみに「ブラック」→「ダーク・ベージュ」に張り替えた感想ですが、とにかく夏場の "暑苦しさ" が見た目にも、実際にも軽減したように思います。
赤と黒のツートンという、只でさえ夏にはそぐわない色合いの車体に、加えて幌が日光を吸収してしまう黒なのですから、これがベージュに変わっただけでも、軽快感のある爽やかなイメージへと、かなりイメージが変わったように思います。
このような着せ替え人形的なカスタマイズの楽しさというのも、2CVならではの面白さではないかと思います。
私の場合も、購入から10年も経った頃にはゴムもノビノビで、座面の沈み込み具合がかなり気になってきました。
で、これまた思い切って、シート張替えをすることに。
例によって、モンテカルロさんの通販で、シートカバー1式と、座面を支えるシートスプリングゴムを数十個購入。
自力でシートの張替えを試みることにしました。
ちなみにカバーは、チャールストン・オリジナルの淡いグレー単色のものから、織物のような格子柄の「最終版」と呼ばれるシートに替えました。
ただ結論から言いますと、このシートの張替えは、幌の交換の時以上に難航しました。
というのも、カバー端部をフレームに固定する為の「カシメ金具」の扱いが思うようにいかず、カバーの表面にうまくテンションがかけられなくて、 結局、中途半端な張り具合のまま、作業完了とせざるを得ませんでした。
正直、シート張替えに関しては、丸ごとプロに依頼すべきだったと、後から思った次第です。
とはいえ、シートの張替えも、幌の張替え同様に、自分好みの2CVにイメージチェンジできる楽しみのひとつと言えるでしょう。時間と手間を惜しまないという方は是非!
とまぁ、長々と述べてまいりましたが、とにかく2CVには、単なる移動手段としての自動車を超えた、特別な存在感があるのは確かです。
車を買うというよりも自由奔放なライフスタイルを買う、なんていうと少々クサイかも知れませんが、何かと手が掛かる分を考慮しても余りある魅力があります。
購入を迷っている方に必要なのは、敢えてマイナーな価値観を選択する勇気と好奇心、これに尽きると思います!
Citroen 2CV Owner's Workshop Manual
★2CVの構造から細部のパーツに至るまで詳しく解説。いざという時、かなり役に立ちます。
オーナー必読の書と言えるでしょう。英語なのが残念ですが、 辞書を片手に読み解きましょう!
MES POTES, MA 2CV et moi: Editions du Chant de l'Etoile