管理人の独創小説 『首長族の宴』

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(3)ナイハーン・ビーチ(Nai Harn Beach)

翌朝、清彦を目覚めさせたのは、まだ薄暗い中で遠くに響く汽船の音だった。

「ぽん、ぽん、ぽん、ぽん、ぽん、ぽん」

なんて、のどかな音なんだろう。室内で寝ていたらこんな音では起きてないだろう。

やがて浩之も目を覚ました。

「おぉ~、海だよ、海。 いいねぇ、ここ。 最高だよ。」

一服しながら浩之がしみじみと言った。
ブーゲンビリアの向こうに広がる海は、二人と同様、まだ起きたばかりのような、おぼろげな表情を浮かべていた。

手短に済ませた朝食の後、二人は水着に着替えると、さっそくホテル目の前の ナイハーン・ビーチ(Naiharn Beach)に繰り出した。 綺麗な弧を描いた白い砂浜では、人々が思い思いに時を過ごしている。そのほとんどが欧米人で、交わす言葉の感じではフランス人が 多いようだった。

またよく見ると、女性のうち、5人に1人くらいはトップレス、つまり「ノーブラ」で、特に人目を気にするでもなく、 潮風に乳房を晒していた。只、当の本人たちが人目を気にしないとはいっても、日本人の兄弟二人としては、こちらが胸元を見ているという事 を悟られたくはなく、その意識がゆえに、妙に視線の動きをぎこちないものになってしまうのだった。

地元のタイ人にしても、観光客とはいえ一般の女性が人前で胸を露わにする、という事への抵抗感は強かったに違いない。実際、 数年後のこのビーチには所々に大きな文字が書かれた立札が並べられたのだった。

「Topless Prohibition」

トップレス禁止。地元からのクレームだったらしい。

一方、海を背に振り返ると、背後にそびえる山並みにはヤシの木が生い茂り、アジアのビーチっぽさを、これでもかと演出していた。

二人は浜辺を更に進み、奥に点在していた個人商店のような売店のひとつでビーチパラソルをレンタルした。 後からパラソルとスコップを持ったおじいさんがやって来て、軸を立てる為の穴を掘り出した。その肌は、タイ人にしてはやたらと黒く、 まるで炒り立てのコーヒー豆のようだった。パラソルが設置され快適な空間ができあがると、二人はシンハービールを飲みながら、 何をするでもなくのんびりと数時間を過ごした。

11時を過ぎた頃、チェックアウトの手続きの為に、一度ホテルに戻った。日本での手配は到着日1泊のみだったので、 今晩の宿はこれから探さねばならない。気持ち的にはこの気に入ったホテルに連泊したかったが、 今回の旅行の主旨から脱線してしまうし、先の事を考えてここは予算を節約しておこう、という事になった。

他の目ぼしいホテルに関しては、日本で予め調べておいた。プーケット・ヨットクラブの更に奥にある、 「ジャングルビーチ・リゾート(Jungle BeachResort)」というコテージ型のリゾートで、2つ星クラスだったろうか、 位置的な情報以外、日本で手に入る情報は皆無だったが、あくまでもナイハーン・ビーチの近く、という点に拘って選んだ。 結局、チェックアウト前に、ホテルのコンシェルジュに話を聞き、予約自体も代行してもらった。これでひとまずは安心だ。

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